
ホテルのIT化戦略とは?宿泊業界のDX事例と業務フローに組み込むコツ
2025.05.22 (更新日:2025.05.30)
目次
競争の激化や慢性化する人手不足などを背景に、ホテル・旅館でのIT化が進んでいます。国内全体で推進されるDXをいち早く取り入れ、業務フローに組み込むことこそ、今後の宿泊業界で生き残るための課題です。
今回は、ホテル・旅館におけるIT化の現状とメリットを解説。DX化を支えるデジタルツールの例や成功のコツ、清掃DXに活用できるサービスロボットについてもお伝えします。
ホテル業界に求められるIT化とは?

まず、ホテル・旅館でIT化を進めるにあたって、デジタル化の現状とDXの意義を確認していきましょう。
ホテル・旅館におけるデジタル化の現状
観光庁が令和5年3月に発表した資料によると、宿泊業を営む企業の約8割が、すでに業務の10%以上をデジタル化しています。特に規模の大きな企業において顕著な傾向であり、従業員1001人以上のホテル・旅館では業務の約半数がデジタル化していることが分かりました。導入しているツールは多岐に渡りますが、広告や予約・販売、業務管理をデジタル化している割合が多い傾向にあります。
宿泊業にはDXが重要
これからの宿泊業界では、単なるIT機器の導入ではなく「DX」の推進が求められます。DXとは、導入したIT機器を活用して、新たな付加価値の創出や従来のシステムからの変革を図ることです。
ホテル・旅館でDXを進める際は、顧客のニーズや、将来的な視点を取り入れる必要があります。ITの活用で、よりよいオペレーションに改善し、CX(顧客体験)を向上させることが大切です。また、外部サービスの活用や専門的な知識・ノウハウの蓄積、DX人材の育成なども今後の課題となるでしょう。
DXとデジタル化との違い
DXとデジタル化は、似て非なるものです。デジタル化とは、ITツールの導入を指します。一方DXは、デジタル化による業務の変革です。つまり、デジタル化はDXのプロセスの一つであり、ITツールによって新たな価値を生み出すことに意義があるといえます。
ホテル・旅館がIT化を進める5つのメリット

IT化は、宿泊業界全体を悩ませるさまざまな課題の解決に有効な手段です。ここでは、ホテル・旅館でDXを推進するメリットを、5つのポイントに分けて説明します。
1.人手不足の解消
業務のIT化は、ホテル・旅館における人手不足を解決する最善策だといえます。サービスの一部をITで代替すれば、業務に割く人手が最小限で済み、より短い時間で効率よく働けるようになるためです。個々のスタッフの労働生産性が上がれば、限られた従業員数でも業務が回せるようになるでしょう。
なおホテル・旅館の人手不足については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

2.業務効率アップ
ホテル・旅館の一部の業務をIT化することで、これまで手動でやっていた作業の自動化が可能です。業務フローが改善し、余力を重要性の高いコア業務に当てられるため、全体の効率アップにつながるでしょう。
3.経費削減
宿泊に関するサービスにITを導入すれば、これまでその業務にかかっていた人件費や求人コストなどがすべて削減できます。特に操作が簡単なシステムを選定すれば、管理工数が減るうえ、従業員教育にかかる費用も最小限です。
4.従業員の負担軽減
負担の大きい配膳・清掃といったホテル・旅館のルーチンワークをIT化すると、人の手より多くの業務を、均一かつ時間を気にせず行えます。従業員の業務負担が大きく軽減するため、働き方改革にもつながり、あらゆるスタッフがよりよく働ける環境が整うでしょう。
5.顧客満足度の向上
宿泊業務にITを導入すれば、顧客への対応スピードが格段にアップします。非接触でのサービス提供が可能になるため、衛生管理も容易になるでしょう。また、IT化自体が施設の新たなエンターテイメントとなります。利用客に特別な体験が提供できるので、SNSにおける口コミ・UGC(ユーザー生成コンテンツ)創出対策としても効果的です。
ホテル・旅館のIT化に活用できるデジタルツールの例
続いて、数あるITツールのうち、ホテル・旅館に最適な8つのアイテムをピックアップして紹介します。
ホテル管理システム(PMS)

ホテル管理システム(PMS)とは、ホテルの宿泊予約や顧客管理などが一括で管理できるシステムです。業態に適したホテル管理システムを導入し、予約受付・管理および決済を一元化すれば、業務負担が大きく軽減するほか、顧客のデータ分析も容易になるでしょう。さまざまな媒体からいつでも予約できるようになるため、新たな販路拡大にもつながります。
また近年は、採用管理システムを導入し、求人および応募者、選考の管理などを一括で行うことで、採用コストを抑えている施設もあるようです。
スマートチェックイン

スマートチェックインとは、フロントでの利用手続きをデジタル化するシステムです。書類への記入やキーの受け渡しなどの一連の動作がすべて簡略化できるので、混雑の防止およびすみやかなオペレーションが実現します。
タブレット端末

タブレット端末をスタッフに支給することで、全体の情報の把握および共有がスムーズかつタイムリーにできるようになります。また、客室に館内案内や各種注文、電話などができるタブレット端末を設置すれば、スマート化と多言語対応、部屋ごとの状況管理の一元化も可能です。
IoT

IoTとは「Internet of Things」の略語であり、簡単にいうとインターネットに接続された設備機器のことです。施錠や照明、空調などの室内設備をインターネット経由でスマートフォンと連携させれば、シームレスかつ手軽に快適な空間が提供できるようになります。
人感センサー

施設の各所に人感センサーを設置することで、館内の状況把握がスムーズになります。特定の場所での混雑の防止および待ち時間の解消、セキュリティの向上につながるため、顧客満足度アップに大きく貢献するでしょう。
チャットボット(Chatbot)

チャットボット(Chatbot)とは、AIによる自動会話システムです。WebサイトやSNSでの顧客対応にチャットボットを導入すれば、簡単な質疑応答が全自動化できるため、ホテル業務の負担軽減につながるでしょう。また、ユーザーの疑問・質問や要望へすみやかに対応できるようになるので、顧客エンゲージメントが高まり、予約増加につながる可能性があります。
AR

AR(Augmented Reality)とは「拡張現実」のことであり、現実の光景とCG画像を合成し、実際には存在しないものを投写してみせる技術です。ホテルにおけるARの活用法として、施設までのアクセスや観光の道案内などが挙げられます。またARは、スタンプラリーや記念撮影など、エンターテイメントとしての活用法も豊富であり、CXの向上に貢献します。
サービスロボット

サービスロボットとは、業務の一部を人の代わりに行うロボットの総称です。ホテルで活用されるサービスロボットの代表格は、お掃除ロボットや配膳ロボット、案内ロボットなど。館内・客室の清掃やレストランおよびルームサービスの配膳といった、単純ながら重労働な業務をロボットに代替させることで、業務負担が大幅に軽減します。
また、サービスロボットはホテル・旅館における人手不足の解消にも有効な選択肢です。人の手とは異なり業務の品質が一定で、より多くの作業が一度にこなせるため、効率も大きくアップします。さらにサービスロボットは、存在そのものの話題性が高いので、新たな広告塔としても活躍するでしょう。
ホテルのIT化を成功させるポイント

ホテル・旅館にITを取り入れてDXを図るには、業務フローへいかにして組み込んでいくかということがポイントとなります。ここからは、宿泊業界のIT化にあたって生じる課題と、その解決策について解説します。
導入に適した環境を整える
IT化の前提となる導入基盤が不十分だと、スムーズにいかないうえ、ミスやエラーを誘発しかねません。そのため、ホテル業務にITを取り入れる際は、導入に適した環境をあらかじめ整備しておきましょう。。
具体的には、従来の管理システムを導入するITシステムに適したフォーマットに変更したり、データ同士を紐付けたりなどの対策が挙げられます。例えば、施設にサービスロボットを導入する場合は、稼働や走行の妨げになる障害物や段差を極力減らすことも大切です。
新システムに適した環境をあらかじめ整えておくことで、従来のやり方からスムーズに移行できるでしょう。
補助金を活用する
IT化を進めたくても費用面がハードルとなっている場合は、補助金や助成制度を活用するとよいでしょう。現時点で設置されているホテル・旅館のIT化に関する補助・助成制度には、次のようなものがあります。
- IT導入補助金
- 中小企業投資促進税制
- 中小企業省力化投資補助金
- 観光地・観光産業における人材不足対策事業
- 宿泊施設インバウンド対応支援事業
補助金や助成金をうまく活用することで、課題解決の費用負担が抑えられます。なお、業務用ロボットの導入の際に申請できる補助・助成制度については、こちらの記事で詳しく説明しているので、ぜひチェックしてみてください。
段階的にDXを進める
すべての業務を一気にDXしようとすると、失敗しやすい傾向にあります。新たなシステムに戸惑う従業員もいることを考慮すると、業務効率が逆に悪化する恐れも否めません。DXは少しずつ進めるとともに、効果測定を通してPDCAサイクルを改善・最適化していくことが求められます。
人の手と組み合わせる
ホテル・旅館業は、顧客とのコミュニケーションや丁寧なホスピタリティが重視される業界です。心温まるおもてなしや非日常体験を求めて宿泊するケースも多く、ITによるサービス提供に不満を感じる場合もあるでしょう。
そのため、現代の技術ではまだ、すべてのサービスをIT化するのは難しいといわざるを得ません。ホテル・旅館がDXを進める際は、人の手でなくても問題ない予約システムや清掃、下げ膳といったルーチンワークから始めることが推奨されます。その分、人の手によるサービスをより充実した内容にバージョンアップすれば、IT化によるメリットを最大化できるはずです。
ホテル・旅館の清掃・配膳業務をDXするなら「ROBOTI」
ホテル・旅館のDXは、まず清掃・配膳から始めませんか。業務用清掃・配膳ロボットの導入なら「ROBOTI(ロボティ)」におまかせください。以下では、弊社のサービスや清掃・配膳ロボットが多くの宿泊施設から選ばれている理由を紹介します。
ROBOTIの特長
「ROBOTI」では、ただ清掃・配膳ロボットを販売するだけではなく、次のようなサービスを提供します。
- 業務用清掃・配膳ロボットの選定
- 最適な導入プランの提案
- 導入前のトライアルおよび導入効果の検証
- ロボットの導入・運用支援
- 導入後の保守サポート
- 補助金・助成金の申請に関する相談
弊社の業務用清掃・配膳ロボットの品揃えは業界トップクラス。小型で小回りが利き、メーカー直販価格で購入できるオリジナル機種「RACLEBO(ラクリボ)」をはじめとする多彩なロボットを用意しており、導入目的・場所に応じて最適な機種を選定します。購入・レンタルのどちらにも対応しているので、予算に応じて最適なプランの提案が可能です。また導入前のトライアル(PoC)を実施しており、マッチングや効果を実感したうえで導入できます。
また導入時には、現場への設置・初期設定をプロがサポート。運用開始後の調整といった保守サポートもおまかせください。
さらに、導入にあたっての補助金・助成金の申請に関する相談も受付中。業務用清掃・配膳ロボット導入の最善策を、一緒に考えていきましょう。
ROBOTIの清掃・配膳ロボットの導入事例
続いて、ホテル・旅館における「ROBOTI」の導入実績を紹介します。
「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」様の事例

従業員の負担軽減と業務効率改善という課題を抱えていた「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」様。さまざまな機種を試したものの、マッチするロボットに出会えず悩んでいるとのことでご相談いただきました。そこで、1台でブラシ・モップ・掃きの3段階清掃が可能な弊社オリジナル小型業務用清掃ロボット「RACLEBO」をご提案。これまで清掃に割いていた人手を別の業務に回せるようになったことで、業務効率アップに貢献しているそうです。
「はつはな」様の事例

下げ膳の業務負担軽減を目的に、業務用配膳ロボット「T9」の導入に踏み切った「はつはな」様。厨房から客席まで距離があり、従来は配膳に多くの時間を割いていました。下げ膳業務をロボットに代替したことで、業務がスムーズに回るようになったほか、空いたリソースでより手厚いおもてなしが可能になったそうです。
「おごと温泉 湯元舘」様の事例

リニューアルを控えていた「おごと温泉 湯元舘」様では、オペレーションの改善が課題となっていました。そこで下げ膳用として「PuduBot2」を導入し、スタッフの業務負担を大幅に軽減させることに成功。補助金を活用したことで、費用を抑えて2台の業務用配膳ロボットの導入を実現しています。
まとめ
業務の一部にITを導入してDXを進めることで、業務効率および生産性、収益アップが期待できます。なかでも、ホテル・旅館にイチオシなのは業務用サービスロボット。清掃や配膳をDXして、宿泊ビジネスの可能性を広げませんか。
業務用清掃・配膳ロボットの検討の際は、導入から保守運用まで一気通貫でサポートする「ROBOTI」へぜひお問い合わせください。
[出典]/観光庁/参考資料 令和5年3月観光DX推進のあり方に関する検討会/https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/jizoku_kankochi/kanko-dx/content/001596703.pdf/